ダイクロイック偏光フィルターは、互いに直交する偏光面を持つ直線偏光の一方を吸収し、他方を透過する働きをする偏光素子です。
ダイクロイック(二色性)複屈折材料であるプラスチックポリマーの薄膜フィルムを光学ガラスで挟んでいます。この種の偏光板は高エネルギーレーザーには適しませんが、有効径を大きくできる、許容入射視野角が大きい、消光比が高い等の特長を持つポラライザーです。
この偏光子の単独使用における透過率(T)は、以下の式で求められます。
T = k1cos2(θ)+k2sin2(θ)
ここで、θは入射光の偏光面と偏光板の透過光軸とのなす角度、k1とk2は偏光板の透過係数で波長の関数です。理想的な偏光板ではk1=1、k2=0ですが、現実的なk1は1より小さく、k2は0より大きな値となります。
無偏光の光線を一対の偏光板に入射させた場合の透過率は、
Tpair = k1k2sin2θ+1/2(k12+k22)cos2θ
となります。ここで、クローズ状態における透過率(消光比)をH90、オープン状態における透過率をH0とすると、k1およびk2との関係は、
k1k2 = Tpair(90°) = H90、 1/2(k12+k22) = Tpair(0°) = H0
となります。この関係より上式は、以下のように書き換えることが出来ます。
Tpair = H90sin2θ+H90+(H0-H90)cos2θ
オープン状態とクローズ状態の透過率の差が大きいため、透過特性グラフでは光学濃度が用いられます。オープンおよびクローズ状態における光学濃度(Δ0およびΔ90は、以下のように定義されます。
Δ0 = log10(1/H0) Δ90 = log10(1/H90)